第6章

莉央視点

化学の授業に向かって廊下を歩いていると、それが聞こえてきた。血の気が引くような、ひそひそとした囁き声が。

「ねえ、ネットのニュース記事見た? 神山地方の人殺しのやつ。あいつの娘、うちの学校にいるんだって」

足が止まる。腕に抱えていた教科書が、とてつもなく重く感じられた。

「待って、それって山崎莉央のこと? まさか、あの子ってお金持ちの銀行家の家の子でしょ」

「自分でググってみなよ。実の父親が誰か殺したんだって。文字通り、人殺しの娘だよ」

廊下が静まり返る。あらゆる視線がこちらに向くのを感じた。手が震えだし、教科書が腕から滑り落ち、床に叩きつけられるように散らばった...

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